相続で未支給の国民年金があった!どうすべき?

皆さんこんにちは。問題解決型税理士の内田智弘です。

相続が発生すると、まずは財産の把握から始まります。

銀行からの手紙、証券会社からのお知らせ等いろいろなものから、被相続人はどんな財産を持っていたのか?を推測しながらになりますが、だいたいの被相続人のかたに該当するのが、支給予定であった国民年金がありますね!

これって、どうやって課税されてしまうのでしょうか?

  1. 相続税の取扱いは?
  2. 所得税の取扱いは?
  3. 企業年金とは異なるの?
  4. 今後はどうするか?

 相続税の取扱いは?

そもそも、国民年金はどういった法則で支給されるでしょうか?

調べてみると、偶数月の15日に、前月および前々月の2ヶ月分が入金されます。

例えば、6月15日に入金される年金は、4月および5月の2ヶ月分となりますね!

6月14日に相続発生すると、どうでしょう?

4月および5月の2ヶ月分が未支給の状態となりますよね。

本来であれば、被相続人に帰属する債権であれば、当然、相続財産として相続税の課税対象となるものです。

しかし、未支給の国民年金、相続財産とならない(相続税は非課税)のです!

その理由は、平成7年の裁決事例にさかのぼります。

つまり、国民年金法に基づく未支給年金請求権の相続性については、最高裁判決(平成7年11月7日)において、その相続性を否定しています。

すなわち、国民年金法第19条の規定については、「同条が未支給年金の支給請求することのできる者の範囲および順位」について、「民法の規定する相続人の範囲および順位決定の原則」とは異なった定め方をしており、これは民法の相続とは別の、被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたものと解されているものです。

したがって、未支給年金請求権を本来の相続財産として相続税の課税対象となると解することはできません。

また、未支給年金請求権は、国民年金法の規定に基づき一方的に付与されるものであることから契約に基づかない権利となりますが、相続税法第3条第1項第6号に規定する「これに係る一時金」には、継続受取人が受給を受けるべき「定期金が特別にまたは選択的に一時金とされる場合の一時金のみが含まれる」こととされている趣旨からすると、未支給年金については、定期金ではなく最初から一時金のみを支給するものであるため、同号に規定するみなし相続財産にも該当しません

以上のことから、未支給年金請求権については、死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。

そもそも、年金の請求権は、「被相続人に属する財産で相続によって承継されるもの」ではないということです。

 所得税の取扱いは?

被相続人の財産とならないのですが、上述しているように未支給の年金を一定の遺族に対して認めています。

遺族の所得税はどうなるでしょう?

結果的には、所得税基本通達34-2により、当該遺族の一時所得に該当します。

所得税基本通達34-2

死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、その死亡後に支給期の到来するもののうち9-17により課税しないものとされるもの以外のものに係る所得は、その支払を受ける遺族の一時所得に該当するものとする。

ただし、一時所得の課税の考え方は、最終的に特別控除額である50万円がありますので、実務上としては、あまり見ることがない論点となりますが、見落としには注意です。

【一時所得】へのリンクはこちら!

 企業年金とは異なるの?

企業年金の年金受給権は、本来の相続財産として、相続税の課税対象となります!

ただし、課税は二通りあるので、ここが重要なポイントです。

①在職中に死亡し、会社の規約等に基づき、会社が委託していた機関から遺族のかたに退職金として支払われることになった年金

⇒ この年金は死亡した人の「退職手当金等」として相続税の対象となります。

➁保険料負担者であり被保険者、かつ、年金受取人が同一人の個人年金保険契約で、その支払保証期間内にその人が死亡したために、遺族のかたが残りの期間について年金を受け取ることになったもの

⇒ 年金受給権を相続又は遺贈により取得したものとみなされて(みなし相続財産)相続税の課税対象となります。

退職手当金等に該当すると、非課税枠を利用できますので、課税方法も間違わないよう注意です!

【相続税の課税対象になる死亡退職金】へのリンクはこちら!

 今後はどうするか?

生前に年金受給者に該当していれば、ほとんどの確率で未支給年金が発生するはずです。

また、会社が退職金として外部に委託しているようなケースでは、在職中に亡くなった場合に企業年金としての支給があるはずです。

おそらく国民年金と企業年金の違いはつくと思うのですが、このうち企業年金にも種類があるので、相続の申告の際には、この二通りの見分け方が非常に重要なポイントになりそうです。

今後、本投稿以外の分野でも税務関係等ののお困りごとがございましたら、ぜひご相談ください。
※投稿における条文は、簡略化のため、一部省略しておりますので、ご了承ください。

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