株式は後継者にいくらで売るべき?

事業承継と一口にいっても、承継すべきものが大きく分けて二つあるのです。

それは、株式(財産権)と代表権(経営権)です。

代表権(経営権)は会社における実務の面が大きいので、少しずつ実務に慣れてもらって、徐々に仕事を覚えながら、タイミングを計って代表権を譲るのが通常のケースとなりますが、その代表権(役員選任等)を決める権利をたどると、株式(財産権)となります。

役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

会社法 第329条

同族会社においては特に問題となるケースはあまりないのですが、親族間の仲が良くないときには、この株式をどのくらい保有しているかが、会社の経営に関して非常に重要な役割を持つのです。

さて、そんな役割を持っている株式(財産権)ですが、一体いくらで譲れば問題がないのでしょうか。見ていきましょう!

  1. 親族間における問題
  2. 類似業種比準価額
  3. 純資産価額
  4. 原則的評価の計算方法
  5. 適正な時価で譲渡をしないと

 親族間における問題

中小企業においては、親族の中で承継するのが一般的ですよね。また、親族間であれば、わざわざ売買取引にはしません。通常は、下の世代に贈与する形で財産権の承継をするケースがほとんどとなります。

そうすると、お金は動かないですから、その贈与税を課税するための評価額をいくらにするかが非常に大きな問題です。

かわいい子供であれば、無償で譲ってあげたくなっちゃうものですが、そこはやはり大問題となります。

無償の場合は、譲り受けた後継者に贈与税の課税があり、譲渡の場合には、後継者は購入資金を用意しなければなりません。

親族間であるからこそ、厳しく、適正な時価で譲らなければなりません!

この非上場の株式(上場している会社以外の会社)の「適正な時価」については、国税庁の定めがあります。

ざっくりと以下のリンクで確認してみてください!

【取引相場のない株式の評価】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm

 類似業種比準価額

特殊な評価は置いておいて、、、原則的評価を見ていきましょう。

まずは、「類似業種比準価額」です。

これは、名前のとおりなんですが、評価の対象となる会社に類似する業種に比準させて計算した価額です。

国税庁が、類似する業種の上場会社(標本会社)の平均値を算出しているので、評価の対象となる会社と比較して、簡単には、どのくらいのレベルにあるかという計算をします。

そのときに使用する平均値というのが、「配当金額」「利益」「純資産」です。

この3つの要素を比較して、繰り返しになりますが、どのくらいのレベルにあるかという計算をして、一旦、評価会社の株価を算出します。

この類似業種比準価額は、一般的には、後述する「純資産価額」よりも低くなる傾向があります。

【類似業種比準価額】

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/03.htm

 純資産価額

色々と細かい決まりごとはあるのですが、本当に簡単に表現すると、会社の所有している資産から負債を差し引いた純資産のことです。

株価の計算は適正な時価を計算するなので、価値のあるものは帳簿価額から評価替えをしなくてはいけません。

主には、不動産や有価証券等が対象となり、評価益がある場合には、想定される法人税等相当額を控除することが可能です。

評価替えをした資産から負債を差し引いた純資産価額を株式数で除した金額が一株あたりの純資産価額となります。

 原則的評価の計算方法

類似業種比準価額と純資産価額が計算できたら、この2つを組み合わせて計算するのですが、どのくらいの割合にしましょう?

こちらも決まりがあります。

その対象会社の会社規模(総資産の金額や従業員の数、売上高により算定)はどのくらいかにより、決まってきます。

会社規模が大きいほど、類似業種比準価額の割合が多くなります。

上場会社の数値を参考にする計算方式のため、会社規模が大きくなると、上場会社(取引相場のある会社)に準じて評価するほうが適正となるわけです。

一方、会社規模が小さくなるので、会社の保有財産(純資産)をその株式の価値とするほうが適正となるわけです。

贈与をする場合には、原則的評価により計算された適正な時価で贈与税を納税する必要があります。

【取引相場のない株式の評価】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm

 適正な時価で譲渡をしないと

ここまで、適正な時価で株式を譲る話をしてきましたが、やはりかわいい後継者(子供)には少しでも安く(資金負担を少なく)譲ってあげたいものですよね。

では、実際に時価より低い価額で譲渡をするとどうなるのでしょう?

時価より低い=低額譲渡」という取り扱いとなり、安い金額で価値のある株式を譲り受けた、とされますので、その得した部分に対して贈与税が課税される可能性があります!

もっとも、法令上は「著しく低い価額」と規定があるため、著しいのかどうかとというところは判断が分かれるところですが。。。

気付いたころには、株価が数億円!なんて話もよくあることですから、株式の承継は計画的に行いましょう。

【著しく低い価額で財産を譲り受けたとき】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4423.htm

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