種類株式で後継者への事業承継を考える!

皆さんこんにちは。問題解決型税理士の内田智弘です。

数年前からですが、事業承継が非常にトピックになってきており、現在でも続いてると思ってます。

事業承継税制の改正によって、中小企業の承継問題が再燃したようにも思いますが、いずれにしても、承継は企業にとって一番重要な問題ですし、実務でさまざまな事業承継案件に携わっていたときも、なかなか難しい問題がたくさんありました。

その中でも、トップクラスの問題は、やはり株価問題でしょう。

次いで、問題が多くなってきていたのは、名義株主等の株主問題でした。

今回は、少し関係する「種類株式」のご紹介です!

  1. 種類株式?
  2. 種類株式の種類は?
  3. 承継したいけど、まだ引退しない!
  4. 今後はどうするか?

 種類株式?

種類株式ってなんでしょうね?

ちょっと説明するのも難しいのですが、少し特殊な、さまざまな権利を付与した株式とでも言いましょうか。

例えば、甲が保有する株式をAとし、乙が保有する株式をBとします。

このA株式に、B株式保有者よりも多く配当を支払う権利を付与します。

そうすると、同じ株式数を保有していたにもかかわらず、甲には10,000円の配当の支払いを、乙には5,000円の配当の支払いを、という差をつけることができるのです。

これは、いわゆる、「配当優先株式」というものです。

このように、その株式を特定して、さまざまな権利を付与することができるのが「種類株式」というものです。

 種類株式の種類は?

・・・ちょっとややこしいですね。。。

その権利にも、いろいろあるので、一つ一つ見ていきましょう!

   譲渡制限株式

 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。

一  譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

会社法第107条

わりと、広く認知されている種類株式でしょう。

譲渡による株式の取得については、株式会社の承認を必要とする株式を譲渡制限株式といいます。

新たに会社設立する際にも、設定をおすすめする種類株式でもあります。

ちなみに、譲渡制限株式は、発行するすべての株式を譲渡制限株式とすることも譲渡制限のある株式とない株式の両方を発行することもできます。

   取得請求権付株式

 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。

二  当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。

会社法第107条

こちらは、あまり認知されていないかもしれません。

株主が、会社に対して、株式の取得を請求することができる株式を、取得請求権付株式といいます。 

こちらも、設定する際に、発行する株式の全部または一部を取得請求権付株式とすることが可能です。

   

   剰余金の配当

株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。

一  剰余金の配当

会社法第108条

剰余金の配当について、優先と劣後を決めることが可能です。

なお、発行の際には、発行可能種類株式総数、配当価額決定方法、および配当条件などについて、定款にきちんと定めておかなければならないようですので、注意が必要です。

こちらは、上述している譲渡制限株式と組み合わせるケースが非常に多いです。

従業員持株会は、その典型例ですね。

   議決権制限株式

株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。

三  株主総会において議決権を行使することができる事項

会社法第108条

株主総会で議決権を行使できる事項について、制限を設ける株式を議決権制限株式といいます。

一定の事項についてのみに議決権を有する株式、もしくは議決権のない株式や一切の議決権がない完全無議決権株式の発行が認められます。

非上場会社の場合は、1株だけに議決権があれば、ほかの株式はすべて無議決権株式とすることも可能です。

   取得条項付株式

株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。

三  当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

会社法第107条

株式会社に、ある一定の事由が生じたことを条件として、会社が株式を取得できる株式を取得条項付株式といいます。

発行する株式の全部または一部を取得条項付株式とすることができます。

あらかじめ設定した定款に定めた事由の発生によって、会社が取得条項付株式を取得する際には、株主総会や取締役会の決議は必要とされないということです。

   全部取得条項付種類株式

株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。

七  当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。

会社法第108条

株主総会の特別決議によって、種類株式の全部を会社が取得できる株式を全部取得条項付種類株式といいます。

すごい権利ですよね。

ただし、この場合、取締役は株主総会において、その理由を説明しなければなりません。また、反対株主には、株式買取請求権が認められます。

   拒否権付株式

株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。

八  株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第6項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの

会社法第108条

特定の事項については、株主総会の決議等に加えて、さらに、その種類株主による種類株主総会決議を要する株式を、拒否権付株式といいます。

いわゆる黄金株というものです。

黄金株は、1株だけ残す場合に、利用が多いような印象があります。

   まとめ

(異なる種類の株式)

  株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。

一  剰余金の配当

二  残余財産の分配

三  株主総会において議決権を行使することができる事項

四  譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

五  当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。

六  当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

七  当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。

八  株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第6項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの

九  当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。

会社法第108条

 承継したいけど、まだ引退しない!

事業承継の場面では、先代経営者が事業継続したいけど、相続承継も早めに対策したいという悩みが非常に多かったです。

仰っている通り、そのまま継続できればいいのですが、株価高騰している場合の相続問題や、退職金を税務上の経費にしてしまうと経営継続できない等の、税務問題が関係してくることも事実ですね。

そこで、重宝される可能性があるのが種類株式だと思います。

いろいろ説明してきましたが、すべて活用する必要は無いと思いますので、ニーズに合わせて絞って活用するのが対策としては好ましいです。

承継したいけど、まだ引退しない!というケースでは、議決権確保のために「議決権制限株式」「拒否権付株式」を利用するのが一般的です。

どちらかというと、「議決権制限株式」のほうが、最近の流れかもしれません。

黄金株は拒否できるのですが、決議することが難しいためです。

後継者に承継した株式に、議決権制限を設定すれば、経営権を確保したまま、財産権を移行することが可能です。

これも、ほんの一例なので、さまざまな環境に合わせて設定が必要となるでしょうね。

 今後はどうするか?

そもそも、種類株式の種類を知らない経営者のかたが多いという事実もあります。

「財産権=経営権」とは限らない、ということを実務で証明できるのが種類株式の特徴ではあるので、まずは、切り離して考えることができるという、考え方の転換が重要かと思います。

その後に、後継者の性格、社長としての適性、承継できるのか、といった判断から、種類株式の必要性の判断をしていただければ、円滑な事業承継が可能になります。

事業承継は、本当に長期計画となると思いますので、専門家へのご相談はお早めに!

今後、本投稿以外の分野でも税務関係等ののお困りごとがございましたら、ぜひご相談ください。
※投稿における条文は、簡略化のため、一部省略しておりますので、ご了承ください。

 

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